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終 活 第二章 葬儀のプロにきいてみた

<プロフィール> 株式会社典禮社の代表取締役である田中利明さん。地域のニーズに寄り添いながらビジネスを展開され、先駆けて終活イベントを開催するなど先進的な取組みも多くされています。また、別会社を立ち上げられ独居の年配の方にお花を届けるサービスをするなど意欲的に活動をされています。
株式会社典禮社公式サイト

― ということで典禮社さんにお邪魔しました。今日はよろしくお願いします! ホームページを拝見しましたが、たくさんホールをおもちなんですね?

田中社長:こちらこそ、よろしくお願いします。そうですね、戸牧ホール、花園ホール、高屋ホール、香住ホールの4つを運営しています。

-4つの葬儀場を経営されてますが、1つのホールで、大きな葬儀も小さな葬儀もできるようにしておいた方が効率的ではないのですか?

田中社長:それはそうなんです(笑)。ウチはそういう意味でいうと業界と真逆のことをしているのかもしれません。非効率ではありますが、1件の〇〇家の葬儀式を1つのホールで丁寧にとりおこなうことで、残された遺族の方の「死」を受け入れる時間というものを大切にしたいと考えています。長い病床生活の末にお亡くなる方だけではなく、救急搬送で急に「死」に直面される方もおられます。そういったご遺族のお気持ちに寄り添いたいと思っています。ですから、葬儀中長い時間滞在される控室も過ごしていただきやすいように工夫をしています。

-葬儀という精神的でセンシティブなことから、合理的な経営判断まで大変なお仕事ですね。

田中社長:持続可能は社会に貢献するためにも、弊社は段ボールの棺桶を採用しています。これは従来のものと比べてコストは上がりますが、火葬場での燃焼効率は20%以上よいそうです。また、以前は米ぬかでつくられた袋を使っていましたが、今はリサイクルペットボトルの袋にしています。

段ボールでできた棺桶 近くで見てもわからないレベルでした

-というか今取材をさせていただいてる部屋の隣は・・・遺体安置場所ですか? チラッと見えたのですが・・この天井のライトはなぜ青色なのですか?

田中社長:そうです。ご遺体をより丁寧に扱えるよう安置所をつくりました。青いライト…これにも、実はこだわりがありまして。 弊社では新入社員には一度棺桶に入っていただくんです。暗い棺桶の中で目を閉じると、だんだん周りの音がボヤっとしはじめて…何とも言えない感覚になるんです。疑似体験をすることで、より亡くなった方や遺族の方に寄り添える心が育まれると思っています。棺桶の底は板なのですが「フローリングは固くないのか?」ですとか「イグサのような絨毯を敷いた方が安らかに眠ってもらえるのではないか?」などの視点が生まれます。天井の青いライトは「密室の中で眠るよりも、青空のもとで眠った方が心地いいのではないか?」という想定のもと特別に設置をお願いしました。

-葬儀の形式も変わってきていますか?

田中社長:コロナ禍で随時焼香が増えましたね。ある町では車に乗ったまま焼香するドライブスルー焼香もあるようです。他には一人暮らしの年配の方が増えて、その方が亡くなった際にご兄弟も年配で葬儀を行えず姪っこや甥っこさんが代わりにされる場合が増えてきました。身寄りのない方は、本当に簡素に済ませたり、時には斎場に直行なんてこともあります。

-自分らしい終末どころではない方もおられるのですね。ところで、田中社長が豊岡で最初の終活イベントを開催されたと聞きましたが?

田中社長そうですね、10年前くらいですかね。都会では割と認知されはじめていた終活を豊岡の方にも体験していただこうと思いました。当時は目新しく3年連続開催し、たくさんの方にご来場いただきました。ただ、私が講演する内容が「幸せの在り方」などをお話しするのに対し、提示するサービスは「ザ・終活」って感じのものになり、何かリンクできる内容を模索していたところ、「健康」をテーマに開催してみました。すると全く異なる層の方、若い方にご来場いただきまして大変勉強になりました。

-今回葬儀のプロにお聞きしたかったのは、正に今のお話に似ていまして、「前向きに終活する方法」なんです。セカンドライフプランみたいな。FIREみたいに考えたら面白いのではないかと思いまして。

田中社長:なるほどFIRE(※1)ですね。そんな資産が欲しいですね(笑)。終活をすすめていくのに便利なエンディングノートがありますよね。相続問題でもめないように遺言状を残しておこうですとか、葬儀や納骨、死後の事務手続きを葬儀社や寺院に相談しておこうなど、死後のための整理があります。一方、認知症になったり身体が不自由になった場合に備え、ケアマネさんとの契約を考えておこうですとか、終末期医療について考えておこうという生前の整理があります。死後は遺族のためですし、生前は家族や本人のためでもあります。本人のことにも関わらず、本人のためになることが意外と少ないんですよね。そうなると自分の死を意識しはじめる年代にならないと、なかなか終活をはじめられないですよね。

(※1)参照 終活 第一章 FIRE的なエンディングノートってありなんじゃね?

-終活ってまず何からはじめればいいのでしょうか?

田中社長:終活を本気で考えるとかならず「幸せ」や「自分らしさ」とは何なのか?という問題にたどり着きます。実はそれこそが一番大切なのかもしれません。私もよく自分を振り返り、本当に自分が心から望んでいることは何だろう?幸せを感じるときはどんな時だろう?と自問自答しています。コロナ禍で自分と向き合う時間が増えた方も多いと思います。まずは、自分らしさとは何だろう?どのようになりたいのだろう?と問いかけ、まずはクオリティオブライフ(※2)を大切にすることでしょう。お金がほしい人もいれば、家族との時間が必要な方もいらっしゃるでしょうし、自分の趣味に没頭したい方も人それぞれですね。

(※2)「生活の質」や「人生の質」という意味。Quality of Life(QOL)とも表記される。

-どのように自分を振りかえればいいのでしょうか?

田中社長:そうですね。自分を振り返るのが難しいという方は、幼いころの写真を時系列に見ていくと昔はこんなこと感じてたな、考えていたな、嬉しかったな、悲しかったなということが振り返りやすいです。


親に自分はどんな子だったか、聞くのもいいでしょうね。私も母親に「あんたはそんな子じゃなかったよ!」と自己分析を覆されたこともあります(笑)。

友人にぶっちゃけて聞いてみるのもいいですね。

明日には何がおこるかわかりません。というと毎日「死」を意識しすぎて辛いのではないかというご意見もございますが、だからこそ未来に向けて、今日を生きる。毎日の日常を大切にするって言うことですかね、月並みな言い方ですが…。

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福祉のサカモト

豊岡市内で会社を経営してます。 今44歳です。 三女の父です。

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コメント

    • タコス
    • 2022.05.26

    エンディングノートを書き上げた方は、持っている方の中でも10%くらいと聞いたことがあります。最初は必要だと思い、書店で買ったり役所からもらったりしても、あれこれ考えるうちに気持ちが沈んでいき、手が止まってしまうとも。記事にありましたように自分を振り返りながら、今までの感謝の気持ちや大切な価値観などを棚卸し、前向きな終活を自然と考えることができるようなエンディングノートがあればと感じました。うまく言えませんが、今後想い描くセカンドライフの項目の間に死を連想させる項目を散りばめるというか、内容の構成や順番も、、、そしてネーミングも。まだまだ勉強不足ですが、興味深い記事で勉強になりました!

      • 福祉のサカモト
      • 2022.05.27

      タコスさん コメントありがとうございます。 何かを成し遂げる尊さはもちろんですが、毎日を前向きに生きるということも大切ですよね!当たり前っすね!

    • 日本恋しい
    • 2022.05.27

    最近墓についても考えることがあります ご先祖があっての自分、でもその土地に縛り付ける側面も 我が家は海外経験もあり子供たちにとって豊岡は帰省で帰るだけ 自分が居なくなると子供達にとって豊岡って? 墓参りするのか?遠くて大変やんな?死んだ後のことも考えなね

    • 福祉のサカモト
    • 2022.05.27

    「墓を守る」って意識は「お墓をきれいに管理してお盆や命日にお花を…」みたいなイメージがあるのですが、正確には教えてもらってません。宗教色の薄い日本では、自分の考えの指針を今までの自分の経験論、合理的判断、家族の教えなどに傾きがちかな と思っています。 ちゃんと勉強したいとは思いますが もう時すでに遅いような気もしてます・・・豊岡にかえってきてくださいな。ええとこありまっせ!

    • 山田 太郎
    • 2022.05.28

    年初に父が他界し手続きに苦労している母の姿を見ると、事務的な連絡になってしまうかもしれませんが、預貯金、保険、不動産などが整理されたエンディングノートがあると残された家族の負担も軽減されるのかと思います。
    生前の父と母で、父の田舎の空き家について話をしていました。母は父が生きているうちに整理しておきたかったようですが、父は自分が育った家を手放すことに抵抗があったのか、話が進まないまま時間がだけが経過していまい。。父としては、死を前提として思い出や気持ちの整理をするといった活動に戸惑いもあったのかもしれません。
    ちなみに空き家について、母も頭を抱えていましたが、空き家の隣に移転してきた会社の方が偶然に買い取ってくださるという話が進んでいるようです。1つ母の肩の荷も下りてよかったです。

      • 福祉のサカモト
      • 2022.05.31

      太郎様 コメントありがとうございます。今朝も友人と話をしていて「預貯金、保険、不動産」などの事務的なものだけでもいいから、両親に残しておいてほしいよな…ってなりました。がしかし、それでも自分が死ぬということを見つめるのは難しいですね。尊厳死の議論もまだまだできない風潮の日本では、なおさらですね。まさに前向きな終活が必要です。それも本人にダイレクトに伝えても難しいかなと思いますね・・・この記事のタグも高齢者になっていますが、むしろ若者タグにして、「私はこうして両親にエンディングノートを書いてもらいました」みたいな記事の方が有用なのかなと思いました。ありがとうございます。家売れてよかったっすね。1000万円くらいですかね(‘◇’)ゞ

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