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当事者や家族を知る・考える

老いていく親の心に寄り添う

前回の記事はこちら:「免許返納後の父は・・・」

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認知症と診断された父ですが、本人には伝えていませんでした。
先々のことを心配したり、細かなことが気になる父の性格を考慮し、それは認知症外来の医師からの指示でもありました。
「もし聞かれたらどうしよう」と思いましたが、父は何も聞きませんでした。
あえて聞かなかったのか、それとも聞けなかったのか…
それはわかりません。

食欲旺盛、散歩などの運動能力も変わらず、私との会話も普段通りの元気な父、
もの忘れが増えたかな?と思うものの、気になるほどではありませんでした。
いちばん変わったと思ったのは、”家の中より外に興味を示しだした父の姿”でした。
玄関先に座って外を眺めたり、裏の畑に出てみたり…
姿が見えないと思ったら庭の草取りをしていたり…
新聞は朝サッと目を通し、テレビは母や私が見ているから付き合いで見ている程度、父がリモコン操作をすることは見かけなくなりました。
テレビの前に座っていても、目を閉じてじっとしていることが多くなりました。

自分の異変を敏感に感じ取っていた父は
「頭がぼぉーっとしている気がする」
「何でこんなことになったんだろう…」
「この先どうなってしまうんだろう…」
そんな事を口にするようになりました。
父にとっては、この頃がいちばん不安な時期だったのではないかと今になって思い返しています。
認知症と診断されて、私もショックでしたが、本人がいちばん苦悩の日々を送っていたのではないか…
当時そのことに気づけていただろうか…と反省しています。

母はそんな父のことをどう思っていたのでしょう。
「見たいテレビがあっても、お父さんがすぐに消してしまう」
「昨日なんかね、夜寝ている時に突然話しかけられて、その後眠れなかったわ」
母にとっては、まだ父の介護をしているという認識はないようでしたが、
「あんたが来てくれると、ホッとするわ~」という母の言葉。
それは、食事の時も、寝る時もずっと父と一緒の母にとっては、気の休まる時がないのだろう
と感じさせられる言葉でした。

父は、機能訓練メインのリハビリデイサービスを普通のデイサービスに変えてもらい
週2回通所するようになりました。
デイサービスに行かない平日は、私が見守り隊です。
介護というほどのことはまだ何もしていません。
一緒に過ごすことで両親の苦悩に少しでも寄り添えればと思いました。
一緒に散歩をして、おやつを食べて、話をして…父の探し物を手伝う、そんな日々。
探し物の定番は、財布と眼鏡。
財布は記憶をたどると出てくるのに、眼鏡はなかなか出てきません。
新しく作るとなぜかその後に出てくる、そんなことが何度か…

病院や買い物では、知り合いに会うと「久しぶり~元気かぁ?」と会話も弾んでいたのに、
帰宅して母にその話をすると、「えっ?そうだったか?」と言う父。
「お父さん、今日会ったの○○さんだった?」
「そうだったかな…忘れたわ」と笑って話していました。

「笑顔は笑顔を呼ぶ」とか「笑顔は幸せを呼ぶ」とか言います。
父の尊厳を守りながら、クスッと笑って朗らかに認知症と向き合いたい…
そして、いつまで続くかわからない両親との穏やかな暮らしを、大切にしたいと思う日々でした。

認知症診断から半年後のお話はこちら「思い通りにならなくても」

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マカナ

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コメント

    • ヤマ
    • 2023.09.13

    うちの両親は健在ですが、だんだん老いを感じてくるようになりました。病院にかかることも増え、動きはゆったりになり、食べる量も減ってきた。
    自分が実家にいた頃の生き生きとした姿が今でも鮮明で。そんな姿から変わっていく様子を受け入れたくない気持ちもあります。
    いつまでも元気にいてほしいな、時が止まってほしいななんて思ったり。親だっていろんな気持ちが混ざっているだろうに…子どもも現実を受け入れなくちゃ、ですよね。

    • マカナ
    • 2023.09.15

    ヤマ様
    コメントありがとうございます。
    親が長生きしてくれるのは嬉しいですが、老いていく親を見るのは少し悲しい気持ちにもなりますね。
    でも、それを受け入れて、親が生き生きとしていた頃の話を懐かしくできるのもまたいいものですよ。
    そして、私くらいの年齢になると、自分の老いも感じることになります。
    穏やかな暮らしの中で、老いることの豊かさを感じることができたような気もしています。

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