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当事者や家族を知る・考える

思い通りにならなくても

前回の記事はこちら:「老いていく親の心に寄り添う」

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「幸せは何気ない穏やかな日々の暮らしの中にある」
若いころには気付かなかったであろうこの言葉は、親の介護を通して、私も自分自身が
年を重ねたから気付けたことだと思います。
「いつまで続くかわからないからこの時間を大切にしたい」
そう思っていました。
父が認知症にならなかったら、こんなに実家に通い詰めることも
両親とこんなに語り合うこともなかったと思います。

父の様子が大きく変わったのは、認知症の診断から約半年後でした。
軽い脳梗塞を発症したため、運動機能と判断能力が衰え、「要介護4」と認定されました。
私にとってはかなりショックな認定でした。
父が紙パンツを常時使うようになったこと以外は、まだ日常生活を全面的に介助している
という認識が、私にはなかったからです。

もう老人カーに乗ることはできません。
車椅子をレンタルしても母には押せないので、
私が行く日や家族のいる土日を待ちかねている父が可哀想なようでもありました。
元気な頃は、とても厳しく、家では口数も少なめで「昭和の父親」を絵に描いたような
父でしたが、何かを手伝うと「ありがとう」、トイレ介助や紙パンツ交換の時は
「ごめん、ごめん」と労いの言葉を何度も口にする父に変わってきたことが
何故か寂しくもありました。

でも、母に対してはまだ「昭和の夫」を貫いていました。
不安な気持ちや、思うようにいかないことがあると、母に感情をぶつけていたようです。
それでも、母の姿が見えないとすぐに「お母さんは?」と聞く父。
父がいちばん頼りにしているのは、やはり母なんだなと思いました。
夜、父が排泄の失敗をすると、母が1人で着替えをさせるのは大変だったと思うのですが、
母は、ずっと頑張り続けていました。
「たまには私が泊まりに来て代わるから…」と言っても、母はうんとは言いません。
「2人揃っている間は、自宅で暮らしたい」というのが両親の希望でしたので、
母の負担を減らすために、ショートステイを利用するようになりました。
ショートステイとデイサービスを併用する中で、母や私たちの負担は減りましたが、
介護者の都合で、父をたらい回しにしているような後ろめたさを私は感じていました。
介護をしている家族が疲れてイライラするよりも、介護をプロとシェアすることで
家族の負担が減り、父にも笑顔で接することができると思ってはいるものの
そう簡単に割り切れるものではありませんでした。

約半年間、数カ所の施設でお世話になりながら、この間に家族で話し合いをし、施設入所の申請をしました。
そして、申請をして、3カ月後に入所可能の連絡を受けました。
うめハコさんの投稿にもありましたが、本当に連絡は突然で、すぐに決断しなくてはならないのです。
(うめハコさんの記事はこちら…おじいちゃん在宅介護 1回目のお別れの時 ~前編~~後編~ )
ショートステイ利用中の父を帰宅させ、自宅で一晩過ごし、翌日の朝、施設入所。
コロナ禍で、家族が施設の玄関に荷物を運んでいる間に、父は車椅子で施設の中に入っていきました。

介護には、いつか終わりが来ます。
でも、いつ終わるかは、実際に終わってみないとわかりません。
「いつまで続くんかなあ…」
「あんた達にもこれ以上迷惑かけるわけにはいかないし…」
母は、もういっぱいいっぱいで、さらに娘のことも日々気にかけていたようです。。
私はまだ大丈夫!頑張れるよ…
そう思っていましたが、母が負担に思うような介護は、介護の押し付けかもしれないと思い
黙って受け入れることにしました。

施設入所後のお話はこちら「介護の終わり~コロナ禍の入院で経験したこと」

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マカナ

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コメント

  1. 福祉のサカモト
    • 福祉のサカモト
    • 2023.12.08

    なってみないと分からないですが、なったときにパニックにならないように頭の隅に入れておきます。自分が当事者になったら、心を残しなら現実を直視できるか不安です。頭脳だけで処理して、何年か後に後悔しそうですわ(‘_’) マカナさんがどういう感じの方なのか、それを理解したうえで、そのような人物の経験は勉強になります。ありがとうございました。

    • マカナ
    • 2023.12.08

    福祉のサカモト様
    コメントありがとうございます。
    本を読んだり、セミナーや学習会に参加したり、経験者のお話を聞いたり、、、
    両親が元気なうちから、心積りと準備はしていた(つもり)でしたが、その知識を実生活に融合させるのは、難しいと感じました。
    家族での話し合いも大切ですが、本音って日常的に過ごしている時の会話の中に表れんだなぁと思いました。
    介護されている親に負担を感じさせないということ介護のポイントのひとつかなと私は思います。

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