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叔母と城崎温泉へ~「ご一緒に!」その一言が笑顔に繋がった日~

城崎温泉に家族旅行

昨秋、長岡京市に住む私の叔母家族が、叔母の故郷の但馬へ10年ぶりに揃って来てくれました。
高齢の叔母、叔父、息子さん2人との家族旅行でした。
この旅行の計画は、私にとって、初夏に叔父から電話がかかって来た日に始まりました。
コロナ禍も収まり、ようやく念願だった叔母の里帰りが実現できるとのこと。

「息子達が予定を合わせて、車で連れて行ってくれます」
「彼岸のお墓参りと、城崎温泉にも行きたくてね」
「城崎に泊まりたいけど、部屋にお風呂が付いている所でないと、泊まれないんです」

城崎温泉は、外湯めぐりといって、街にある温泉施設に行くのが特徴になっています。そのために、旅館、ホテルの部屋に必ずお風呂があるとは限りません。

「叔父さん、泊まれる部屋が限られるかもしれないです。予約が取れるかな、どうでしょうか」

と答えると、叔父が叔母について
「1人で外湯に行けないと思うんです。旅館の大浴場でも無理かもしれない」
と話してくれました。

叔母と私

叔母は、私の母の妹です。
私が小さい頃、洋裁教師をしていた母に代わって、独身だった叔母が私の面倒を見てくれていました。
いつも私の手をひいて、豊岡の街を散歩してくれていたそうです。
今、70代になり、1人では新しい場所に行くのが不安になっているとのこと。

普段は、住み慣れた自宅で叔父と2人、穏やかに暮らしている叔母。
私でも新しい場所に行くのは戸惑うから、それは当然だよね…。
そうか、男性ばかりだと、外湯には付き添えないのか…。
それで、部屋のお風呂でないと入れないってこと?
え?待って、私がいるじゃない!

「叔父さん、私、叔母さんと一緒に外湯に行けますよ。だから部屋にお風呂が無くても大丈夫です。せっかくだから外湯に行きましょう。ご一緒に!」

叔父が
「え?本当に?それはとてもありがたい」
と、言ってくれました。

その後インターネットで、風呂トイレ付きの旅館の部屋を見つけ、予約ができました。
これで、もし体調が悪くなっても大丈夫。叔母達と会える日が近づいてきました。

叔母家族と再会

お天気に恵まれた、お彼岸の午後。
久しぶりに出会えた叔母家族は、何年経っても変わらぬ笑顔でした。

東京から帰省した次男が、大阪に住む長男と共に、両親を車で故郷に連れて行くという、心温まる家族旅行です。
仕事で忙しいスケジュールを調整しての旅行。息子さん達の深い思いやりに感心しきりでした。
ご両親を急かすこともなく、穏やかに旅を楽しんでいるご様子です。
香住のお墓に私も一緒にお参りし、後で再び城崎の旅館で合流することになりました。

さぁ、外湯へ

旅館では、部屋まで私が入っても構わないとの配慮があり、とても助かりました。
部屋に入ると、叔母が不安そうにしています。

「叔母ちゃん、私がお風呂に行きたいから一緒に行こう!」
「食事までに時間があるから大丈夫」

そう言うと、叔母の表情がだんだん明るくなってきました。
旅館のカゴにタオルを入れて
さぁ、外湯へ出発!

温泉街を歩いて「一の湯」へ。
実は私も、ここに来るのは30年ぶりでした。
うまく行くかな…。
温泉施設は脱衣室までスロープが続き、手すりもありました。これなら一安心です。

温泉っていいな

叔母と外湯を楽しむ際に、私が気をつけていた事があります。
これから起こることを予測して、叔母に伝え続けていたのです。

「もう少ししたら、右に曲がるよ」
「もうすぐスロープがあるよ」
「あと少しで、手すりを持ち替えよう」

これは、母と車椅子で出かける時に心がけている事です。
こうすると、母も私も心の準備ができて、突然の動きにびっくりする事が無くなります。
叔母にも、これがとても有効だったようで、落ち着いてお風呂に入る事ができました。

半露天の洞窟風呂では、「あー良いお湯だね」と、ゆっくり浸かることもできました。
着替えは、声をかけても、なるべく手は出さないことを心がけました。

帰りには外湯の玄関前で、スマホで2人の記念写真も撮りました。
さぁ、帰りは手を繋いで、叔父達の待つ旅館に戻ろう!

旅館に戻って

食事の始まる10分前には無事に旅館に戻る事ができました。
部屋に入ると、待っていた叔父の顔が、パッと明るくなりました。

「良いお湯だったわ〜」と叔母が言い

「あぁ、顔を見たらわかる」と叔父が笑顔で応えました。

息子さん2人も戻り、みんな良い表情です。

外湯前で撮影した写真を見せると
「お母さん!イキイキしてる!」と大好評。
叔母は、ホクホクの笑顔になって、また一緒に写真を撮りました。

翌日は、実家に泊まってもらい、私の母との再会の時間がもてました。
久しぶりに出会えた姉妹。
その様子を見ていた私にとっても、しっかりと心に刻まれる出来事でした。
春になったら、また他の外湯にも行こうねと約束して、たくさんの思い出と共に家路につかれました。

心を一歩、前に進めて

今回の家族旅行のお手伝い。
叔父から電話がかかってきた時に、私が外湯に一緒に行く提案をためらっていたら、叔母の素敵な笑顔は見られなかったかもしれません。
そう考えると、本当に良かったなぁと思っています。よく知っている叔母なので、迷うことなくサポートできました。
叔母の笑顔に繋がったこと。それは私が「声はかけてもなるべく手を出さない」ようにしていたからなのでは?と感じています。
それで叔母が「私もできた。楽しかった」という達成感を持ち、嬉しい気持ちになったのではと思います。

これは母と義母のサポートをするうちに自然と学んだことでした。なんでも手を貸していると、本人の意欲も体力も衰えて行くのです。
「まだまだ自分でできるよ!」という気持ちが、とても大事だと思っています。

もちろん「数十年の時を経て一緒に街を散歩できたこと」
それが叔母と私、2人の笑顔の元になったのは、言うまでもありません。
私も嬉しくて楽しい1日でした。大切な思い出になりました。

今回の経験で「ご一緒に」の一言は、
誰かの「できた!楽しかった!」という笑顔に繋がるかもしれないと知りました。
いつでも心を一歩、前に進めて
「一緒にやりましょうか?」「サポートしましょうか?」と言えるように。
そして誰かと私の笑顔が、これからもっと増えていくと良いなと思っています。

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kokoron

お花を育てるのが好きな主婦です。 数年前に10代で脳卒中を発症した息子と、 高齢で車椅子ユーザーになった母と、 骨折後、体調を回復してきた義母のサポートをしています。 そんな毎日の中で、人に助けてもらう有難さを知りました。小さな気づきを発信できたら良いなと思っています。

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