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インクルーシブクッキング~食卓を囲む幸せをすべての人に

2025年5月23日 豊岡市中央町「本と暮らしのあるところ だいかい文庫」にて
「インクルーシブクッキング」講座が開催されました。

講師は京丹後市在住の言語聴覚士 笠井幸子(ゆきこ)さん。
「かさい食堂」の車椅子女将で、インクルーシブクッキングを広める活動をされています。
講座が開催予定だと知った時から、私もぜひ参加したい!と思っていました。

インクルーシブクッキングって何?

笠井さんのSNSに、次のように書かれています。

みんなで作る楽しみ、食べる喜び、食卓を囲む幸せを全ての人に

お料理が苦手な人も。
 手が上手く使えなくて料理を諦めていた方も。
 車椅子の方も。
 耳が聞こえない方も。
 噛みにくさや飲み込みにくさがある方も。
 子どもも大人もお年寄りも。

 みんなで作ってみんなで食卓を囲む、
 インクルーシブクッキングに来てみませんか?」

 笠井さんのSNSの投稿
 https://www.instagram.com/p/DJl6vCKvtjS/?igsh=b3VpNWpwdW40Ymd6より引用

食べることは本当に大事なこと。
家族が食べ辛くなっても、なるべく好きな物を、美味しく食べてもらいたいな
と私も常々思っていました。
こんな活動があるなんて嬉しくなりました。

講座の始まり~今日のメニューは

開催時間が近づき、参加者が集まってきました。
嚥下食を体験したい方だけでなく「夕食にお好み焼きを食べたかった」という方も。
それぞれ思いは違うけれど、美味しいものを作って食べたいという気持ちは同じ。

調理器具は、参加者が分担して持ち寄りました。
講師だけが道具を持参するのではなく、みんなで手分けをして準備するって良いなぁと感じました。

開催時間となりエプロンを付け、手拭いを頭に被り、手を洗って。
さぁ「インクルーシブクッキング」の始まりです!

笠井さんからレシピが配られ、まず説明がありました。

今日作るのは
「ふわふわお好み焼き」です。

レシピに
MDF歯茎でつぶせる と書いてあり
「介護食の売り場の商品にも、このような表示があるんです。それと同じ表示方法です」
と教わりました。
「ハンドブレンダー」を使い、舌でつぶせるお好み焼きも作ります。

今日は、炭酸にとろみをつけた
「とろ〜り炭酸しゅわしゅわ」も作るとのこと。
これは、ますます楽しみです。

切り方と材料に工夫

まず、2グループに分かれ
キャベツの千切りからスタートです。

「キャベツは繊維を切るように、向きを考えて切ってください」
なるほど、そうすれば、野菜の繊維が口に残らない。工夫の1つです。

「今日は電子レンジで加熱できないので、細く切ってね」
笠井さんの指示を受けて、交替でキャベツの千切りに挑戦しました。
細く切ることを目指して、みんな真剣な表情。

次に材料を1枚分ずつ、ポリエチレン袋に入れていきます、
それを外から揉むと、よく混ざる上に、洗い物が少なくなり、一石二鳥です。

レシピを見て、興味を持ったこと。
お好み焼きの材料に「はんぺん」「麩」とあるのです。
お好み焼きに入れるのは珍しい。

どんな味、食感になるのかな?と思っていました。

はんぺんは手でちぎり、袋の中へ。
麩は、すり鉢で擦り、粉状にします。
桜エビと一緒に擦ると、綺麗なピンク色になりました。

アレルギー対応で、桜エビを入れないものも、1枚分作りました。

卵、チーズ、紅しょうが、顆粒だしも袋に入れて、よく揉みます。
はんぺんが崩れて、材料が混ざっていく感触は、ふわふわして心地よく

「これストレス解消になるかも!」
と、交替で楽しみました。

はんぺんが入ることで、焼き上がりに、ふわふわな食感が生まれるようです。
笠井さんによると、麩は水分を含みやすいので、しっとり感が出るそうです。

混ぜ方と焼き方に工夫

生地を混ぜる調理器具「ハンドブレンダー」

これを使うと、舌でつぶせるお好み焼きの生地が出来ます。
使ってみたかったという参加者が、順番に体験させてもらうことに。
カップに入れた材料が、あっと言う間に混ざり、トロトロになりました。

いよいよ、フライパンで焼く準備が整いました。

焼き方は普通のお好み焼きと、ほぼ同じです。生地を丸く流し入れ、蓋をして弱火で焼き上げます。
蓋をすることで、中まで熱がよく伝わります。

ひっくり返す時はみんなで大盛り上がり!

上手に出来た物もあれば、バラバラになってしまった物も。私もバラバラに…。
でも、分けて食べるから、大丈夫!と、皆さんからの温かい言葉が。

嚥下について解説

焼き上がりを待つ間に
「食べるしくみのミニ講座」
笠井さんから、嚥下について教わりました。

「喉に手を当てて、唾を飲み込んでみてください。喉の骨が上下に動きますよね」

「こういう動きがあって、食べ物が飲み込めているんです」

口の中の構造図と共に、詳しく解説していただきました。
食べ物が口から入って、食道に行くまで、喉の動きがとても大事だということ。

反射的に喉が動けば良いけれど、何かの原因で、それが難しくなっている人もある。
それを補う為、飲み物には、とろみをつけるのが効果的。
とろみがあると、口に入れてから喉に行くまでの時間がかかるので、喉の動きが遅れても、うまく食道の方に入りやすい

とのこと。

飲み物に、とろみをつけることは、私も経験がありました。
家族が入院し付き添いをした時、飲み物は必ず、とろみをつけるようにと指示があり「とろみ剤」を使っていたからです。
ただ「誤嚥しない為に」と思っていて、その詳しい意味と役割を、この日初めて知りました。

炭酸飲料に「とろみ剤」

笠井さんが持参された「とろみ剤」の数々。
病院で見慣れた粉状のもの、液状のもの、たくさんの種類がありました。

とろみ剤を使うと、食べ物や飲み物に混ぜるだけで、とろみがつきます。
片栗粉のように水に溶く必要がなく、加熱も必要ありません。
ドラッグストアなどで、販売されています。

「今日は炭酸飲料に、とろみをつけてみます」

炭酸飲料には、液状のものが溶けやすいとのこと。
コップに注いだ炭酸飲料に、各自がとろみ剤を入れて、混ぜてみました。

飲んでみると、柔らかいゼリーのようでとても美味しい。
シュワシュワ感も、消えていませんでした。これは意外でした。

新しい感覚〜!という声が聞こえてきました。

仕上げをして…いただきます~!

そうこうしているうちに、お好み焼きが、焼き上がりました。
お皿に載せて、仕上げです。

仕上げの工夫は…

そう、それぞれのお好みで!
ソース、鰹節、青のり、マヨネーズなど。各自がトッピングして完成です。

さぁ、みんなで「ふわふわお好み焼き」を食べる時間に。

生地を袋に入れて手で揉んだものと、ブレンダーを使ったもの。
半分ずつお皿に載せて、2種類を食べ比べてみました。
ソースをかけると見た目は同じで、違いは分かりません。

ブレンダーを使ったものは、口の中で、すぐに崩れる感じがしました。
確かに食感が違います。
それが歯茎でつふせるものと、舌でつぶせるものの違いだと分かりました。

みんなで、お好み焼き美味しい〜と言いながら食べ、会話も弾みました。

「豚肉入ってないのに、旨みがある。チーズ入れてるから?」

「そういえば、小麦粉使ってないよね。でもお好み焼きになってる」

「ふわふわしてる」「噛まずに食べられる」

など、それぞれ感想を話しながら、楽しい時間を過ごしました。

片付けもみんなで

片付けも手際よく終わり、記念写真も撮影し、インクルーシブクッキング講座が終了しました。
「みんなで作ってみんなで食べるって良いなぁ」と実感した講座でした。

今回の参加者には、嚥下が難しい方は居られませんでしたが、
こういう体験は、きっと誰かの、そして自分の役に立つ事があるのでは?と思いながら帰宅しました。

食事の工夫とは

講座を受けて、気づいたことがあります。
誰でも美味しく食べられる食事を工夫することは、相手を思いやる気持ちの現れだと。

「どうしたら、みんなで美味しく食べられるかな?」

「見た目も美しく、食べる人が、一緒に食べられた!と喜んでくれるような料理を作りたいな」

など、相手の立場になって、料理を考えること。
そしてそれをみんなで作って、味わうこと。

全て、思いやりの気持ちが形になっていることだと感じました。

「インクルーシブクッキング」を広める活動をされている笠井さんは
本当にエネルギッシュで、思いやりに溢れる素敵な方でした。
SNSでは、全国各地に出向いて講座を開催されている様子が発信されています。
これから先も「かさい食堂」だけでなく、色々な場所で講座が開催されるようです。

食べることに困り感を持っている方はもちろんですが
今は必要ないという方も、インクルーシブクッキングを体験・調理してみてください。

誰かの困り感を、どうしたらうまく解決できるかと工夫された料理。
工夫によって、食べられるメニューの範囲が広がり、楽しみも増えていきます。
そのような料理を作り、一緒に食べることで、お互いに温かい心が生まれてくるのではと思いました。

思いやりの気持ちを、大切にしたいな。

そう改めて感じた「インクルーシブクッキング」

参加者みんなで協力しあえた、とても楽しく充実した講座でした。

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笠井幸子さん 
 公式サイト Seat Table(シートテーブル)
 https://seat-table-kasai.com/

SNS
 https://www.instagram.com/seat.table?igsh=MnhoM2h3NXZ6eGkw

 https://www.facebook.com/share/16N77B7P8c/?mibextid=

かさい食堂SNS
 https://www.instagram.com/kasai_shokudou?igsh=ZGF0aHV5czZ2YzM1

開催場所の「本と暮らしのあるところ だいかい文庫」は2025年7月1日より閉所しています。
今後の詳しいことは、こちらからご確認ください。
https://daikai-bunko.com/
記事の講座は、2025年5月23日に開催されたものです。



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kokoron

kokoron

お花を育てるのが好きな主婦です。 数年前に10代で脳卒中を発症した息子と、 高齢で車椅子ユーザーになった母と、 骨折後、体調を回復してきた義母のサポートをしています。 そんな毎日の中で、人に助けてもらう有難さを知りました。小さな気づきを発信できたら良いなと思っています。

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