親の運転免許自主返納問題
高齢ドライバーによる交通事故対策を盛り込んだ改正道交法が5月13日に施行され、一定の違反をした75歳以上に対する実車試験と、サポカー限定免許制度がスタートしました。
制度としてこのような対策が進められても、高齢ドライバーによる痛ましい交通事故がニュースで取り上げられると、自分の親の免許返納のことが気になりますね。
心配だから、危ないからと無理やり取り上げることはできません。
私も、どのタイミングで自主返納の話を切り出そうかと親の顔色を伺い、悩む日々でした。
2019年に池袋で発生して世間の注目を集めた高齢ドライバーによる事故後、自主返納も増えていたようですが、その後また減少傾向にあるそうです。
車が「生活の足」となっている地域では難しい問題だと思います。
自主返納・・・決めるのはあくまでも本人
ご近所の高齢男性は、80歳を機に自主返納されたそうです。
80歳とは思えないくらいお元気そうで、まだまだ運転できそうにお見受けしたのですが、
「離れて暮らしている子ども達に心配をかけるし、事故を起こしてからでは遅いから」と決断されたそうです。
定年まで長きにわたりバスの運転手さんで、運転には自信をお持ちであったであろうお方のプロ意識とプライドが、自主返納を決断させたのかな?と思いました。
このことを父に話したのが、私の父への自主返納アプローチスタートでした。
「自分も考えないといけないと思ってはいるけど、返納した人は不便でみんな後悔している」
「気をつけて安全運転をしているから、自分は大丈夫」と言っていました。
すでに家族からも免許返納のことや、運転について言われていて
・暗くなってからの運転は控える
・交通量の多いところはできるだけ通らない
などのルールを決めていて、まだ他人事という感じでしたが・・・
ほどなく総合病院の予約診の日、私に送迎を頼んでくるようになりました。
父は、駐車場が遠いからとか、雨が降っているからとか言っていましたが、
もしかすると運転に少しずつ不安を感じ始めているかもしれないと思えました。
免許返納をめぐって大ゲンカ?
そんな時、父に高齢者講習の連絡が来ます。電話予約も済ませていました。
本人は免許更新のつもりでいるのに、家族から免許返納を強く言われ、父はご機嫌ななめでした。
そして父は、高齢者講習用のテキストまで購入し、やる気満々です。
でも、それを見た私は不安になりました。
前回の更新時には、「満点に近かった」と言っていた父が、今回は自信ないのかなと・・・
そして、同居家族は心配するあまり、免許更新を父に断念させたくて
「もしお父さんが事故を起こしたら、家族みんなに迷惑がかかる」
「そんなことになったら、ここには住んでいられない」
ネットで、「免許自主返納、説得の仕方」と検索した時に「禁句」と載っていた言葉を使ってしまいます。
さあ大変!!
免許返納をめぐって父と娘の大ゲンカ勃発!
父は私が実家に行くたびに愚痴を言い、母と妹からは、何とか父を説得して・・・と懇願される日々が始まります。
父の言い分
・子どもに言われると、頭ではわかっていても抵抗を感じる
・言い方が一方的で、自分のすべてを否定するような言い方をされる
・免許返納のことが話題になると、家族みんなに追い詰められている気がする
本当は、父のことを心配し、ケガや事故のない安心した老後を送ってほしいから免許返納を勧めているのに、そうは伝わっていませんでした。
ネットに載っていた中で参考になったのは、
「親の尊厳を尊重し、親が不安に思っていることに耳を傾け、不安を取り除く」
というフレーズでした。
何十年もの間、「生活の足」となっていた車がなくなってしまうことへの不安、耳が遠くなったり、物忘れをすることを自覚しだしたことへの不安や心細さは本人にしかわからないのです。
みんなで協力する
連休やお盆に帰省した子どもが、たまたま免許返納のことに触れると
「そんなことを言うために帰ってきたのか」と怒りだしてしまうほど敏感になっていた父。
我が家では、父の性格を考え、みんなで協力して説得するのではなく、
「免許返納は私に任せて、ほかの人は父に何も言わないでほしい」と協力を求めました。
電話予約した高齢者講習にも、私の運転で一緒に行きました。
父は、思いのほかできなかったと落胆していました。
「80歳過ぎると、前回は満点近かったのに3年経つとできなくなってたという人が多い」
と話すと少し安心した様子の父。
実際、同じ年頃の親をもつ友人数人から似たようなことを聞いていました。
帰り道、「来る時もこの道だった?」と聞かれ、「そうだよ」と言うと、よく覚えていなくて不安そうでした。
「講習のことで頭いっぱいで景色見えてなかったかも?」と言いつつ、免許を持っていない母に今まで以上に同乗を求めて出かけていた理由がわかりました。道順が不安だったのです。
父の中で、今までとは違う自分を認めざるを得ない時期で、いちばん辛い時期だったと思います。
数日後、父から高齢者講習の結果判定のこと、その後の免許更新の流れ、さらに返納する場合のことを聞かれました。
そして、私が実家に行くたびに、父の方からこの話をするようになりました。
「わかってはいるけど、決断できない」と毎日、毎日自主返納のことばかり考えていたようです。
私から父へ伝えたこと
・ケガや事故のない安心した生活の中で、ずっと健康で長生きしてほしい
・車がなくなることへの不安に寄り添い、不便にならないよういつでも協力する
・決めるのはあくまでもお父さん本人
・免許返納は終わりではなく、新しい老後生活の始まり
もうこの頃には、免許更新ではなくほぼ返納の方に考えが傾いていて、でも決断できないという状況でした。
それでも父は1か月ほどで決断しました。
二人で自主返納の手続きを終えて帰宅すると、母が父を労っていました。
私が自主返納のアプローチを始めてから、9か月後のことでした。
免許返納問題から3年が経ちました。
この問題は、介護など次へ続いていく問題の入り口だったと今は思っています。
適切なタイミングや、親の性格にどう向き合うかが大切なのはわかっていても、結論や即決を求めると意に反した方向へ進んでしまうことがあります。
心と時間にゆとりを持って進めることがとても大切だと感じました。
私にとって、この時期は、父とのコミュニケーションががいちばん取れた時期であったと思います。
免許返納後のお話はこちら「免許返納後の父は・・・」
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