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「ふくし」を知る・考える

うちの近所の八百屋さん ー 高齢化問題🌸 ー

今年も綺麗な桜🌸が咲きました。城崎の桜は 地元住民ながら大谿川とのコントラストが本当に美しいと思う。
住民にとって春を感じる そして沢山のお客様を迎え入れる大切な桜である。自慢では無いが川掃除も年三回 地元住民でこの美しい景色を守っていると言う誇りもある。
そんな綺麗な桜と川を真正面に見る事ができる八百屋さんが我が家の近所にある。初めてお店の前を通る人にはそこが八百屋さんだと気が付く人は少ないと思う。

このお店は創業60年余り。私が嫁いで30年近くのお付き合い。
現在は もうすぐ90歳に手が届くであろうお母様と息子さんのお二人で切り盛りされている。
その息子さんは 城崎 と言う観光地が朝目覚めるより早く  10㎞先の 豊岡 と言う こうのとり 育む町にある市場に仕入に行かれる。そんな沢山の観光客を受け入れる旅館や携わるお店に囲まれた場所に その店はある。

店内は とにかく所狭しと野菜から日用品まで色々なものがある。 
「さすがに この品物は無いやろう~」と思いながら通い籠(今で言うエコバッグ)を持ち店に行っても
「あるやーん 助かった~」と家に帰って来るのが日常である。
とにかく「あっ しまった! 足らんがな」と思う時に助けてもらう心強いお店である。

そして近くには 由緒あるお寺さんも何軒かある。お彼岸 お盆ともなると所狭しとお花が並び
お正月近くとなると しめ縄 お正月料理の材料も並ぶ。置いてある食材で四季を感じられる店である。
旅館さん 従業員さん お寺さん 喫茶店 お土産屋さん … 
そして 今 時代も流れ お一人暮らしや御高齢者への配達もされている。(配達担当は息子さん)

こんな幅広い人達の対応をお店で一人でして来たおばちゃんは(以下おばちゃんと呼ぶ)歴史あるソロバンとレジを器用に使いこなし どんなに時間に追われたお客様にも的確に合計とつけ払い お釣りを確実にこなす。
私も そんなおばちゃんには 絶大なる信用があり ほぼお釣りなんぞ確認せずに帰ってきた。

い年月が経った今 とうとうおばちゃんも足が痛そうになってきた。商品から商品の移動に切れが無くなってきた。


そんな働き者のおばちゃんは 一日の疲れを取るのに 近くの外湯に行く。おばちゃんは痛そうな足を引きずりながら傘を杖代わりに少し歩き 少し休み 少し歩いては 少し休み 後ろから見ると 長い人生 足が苦労を表している。
外湯近くの地元住民は お客様が食事の時間に 一日の疲れを取る為に入浴に行く。住民同士の社交場となり楽しみの一つとなっているのである。なので近くに外湯がある家は 内湯が無い家が多いのである。

最近のおばちゃんは外湯に行くのを お客様の少ない時間を選んで行くスタイルから 足元が明るい時間へ行くスタイルへ変わってきた。日によれば沢山の車や人を避けながら・・・。 
行きつけの外湯が定休日ともなると更に遠い外湯に行く事になる。外湯も移動場所全部にスロープや手摺りがあるわけではなく ヘルパーさんが入って来れるわけでなく 万が一の助けは いつも笑顔の受付のお風呂番さんの有り難いお気使い頼みと 近くに寄り添う地元住民頼みとなる。それでも 外湯は地元住民には生活の一部から掛け離す事ができないのである。どんなに足が痛くても 家には風呂が無く 長年同じ時間に訪れる仲間が待っているのである。

そんなおばちゃんも最近計算が心配になってきた。
沢山の品物を並べると 慌てるようになってきた。
商品から商品への移動に時間がかかるようになってきた。


そして私も一緒に計算するようになった。品物の値札を見えるように出した。
沢山の買い物があるとき ゆっくり計算してもらえるように 信用あるのを見越して?又後から支払いに行く。

それでも 60年近く働いて来たおばちゃん。
お花の長さを用途別に切りそろえるこだわりは譲れない。
笑顔と元気な声での接客は譲れない。
お店で計算。取り敢えず息子さんへ託して プライドは譲れない。

今更ながら気が付いた。
ひょっとして 
ひょっとしてこのお店一日12時間近く開いてた?
ここは定休日あったっけ?

どう考えても 本日休業 の看板を見たことがない。

私にとって 当たり前のおばちゃんは この観光地を支えて来られた方々の大切なお一人なのである。
私にとっても生活を支えていただいた 大切なご近所さんである。

改めて毎回ゆっくり喋るようにした。商品を一つずつ 計算しやすいよう並べた。
一緒に計算して 二人で間違えて一緒に笑った

そしてある日思い切って 息子さんに言ってみた。
「介護申請して 歩行器とか借りてあげられないの?」
その答えが
「もう ブレーキとか操作が分かれへんだろうで」
他人事ながら本当にショックだった。 いつかは来るであろう時の流れに 心の中で涙がでた。

この店は おばちゃんにとって生きがい。息子さんにとって生活の場。これが現状。
おばちゃんに長生きしてほしい。一日でも長く お店に立ってほしい。
一日。一日。


今年も桜がが綺麗に咲いた。
桜が映る川は 亡くなられたご主人がいつもゴミを拾い守って来られた川。 
雨が降っても 風が吹いても。
そしてコロナと戦ってる今 息子さんが守る。
寒い冬を乗り越えて
今年も 美しく咲く桜 

見守ることしか出来ない時代の流れが 今日も一日過ぎて行く。

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うめハコ

豊岡市城崎生まれの城崎育ち。嫁いだ先も城崎で。この街の助け合いの精神が大好き。助け合いの一部となるような情報発信をしていきたいと思います。

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