父と母は90歳前後の高齢者2人暮らしです。
2人とも体に年齢的な衰えはあるものの、介助が必要な状態ではありません。
しかし、母は数年前から物忘れが進んでいます。いろいろなことを忘れます。
来客や電話の応対をした直後に、相手や内容を忘れます。
それまでできていたことができなくなったり、途中で何をしているのか忘れます。
最近では、しんどいことや痛いことも、日が変わると忘れています。
母は料理や洗濯の仕方も忘れて失敗することが増え、
父に「自分がやるからしなくていい」と言われ、家事をすることがほとんどなくなりました。
父はよくやっていますが、90歳近い人が家事をして暮らしていくのはとても大変です。
嫁いでいった私たち娘は、
父母ができるだけ楽に安全に暮らせるようにと思い、時々行って手助けをします。
この頃父が、
「自分が動けなくなったら母はどうなるか。施設に入るためにはどうすればいいか」
などと言うようになりました。
気の合った人たちとの集まりもコロナ禍で減り、家の中で何をするでもなく座っていることが多い母。
そんな母に合う福祉サービスを受ける準備をして、
いざというときに備えるのがいいと思い、サービスの利用を父母に提案しました。
担当者との話の席で、父は
「家で体操したり本を読んで過ごせている。わざわざそんなところへ行かなくてもきちんとできている」
と言ったかと思えば、
「送迎の時間に家にいないといけないのが大変だ」とか
「昼食を出してもらわないと。家で作るのは大変」
などと言いだしました。
なんだか父が焦っている、慌てて少し取り乱しているように見えました。
母はそんな父をなだめていました。
それでも、何とか一度サービスを体験することになりましたが、当日の朝、父が電話をしてきました。
「『コロナ感染が増えている。集まるのはよくない』と言われている。
こんな時にそんなところへ行かせたくない。断ってほしい」と。
あの時父は、父自身がひとりになる不安を感じて焦ったのかもしれません。
母のことでいろいろ大変だと口では言うけれど、父にとって母は生きる力の源です。
そういえば父こそ集まりに行く機会がないかもしれません。
私は母のために、またそれで父の負担を減らせると思い手続きをしましたが、
父母の気持ちを確かめながら一緒に考えていなかったかもしれません。
日々の暮らしの手助けもどれくらい助かったと思っているのか分かりません。
心配が恩着せがましくならないように、見守っているつもりが見張りにならないように、
気持ちに余裕をもって父母と付き合っていこうと思った出来事でした。
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