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「ふくし」を知る・考える

高齢者の生活に彩りと快適さを~マスキングテープで みんなワクワク~

暮らしが楽になる工夫を

年齢を重ねるに連れて、体の変化を訴える高齢者の方は多いようです。
耳の聞こえが悪く、目が見えにくくなり、体力が衰えてきた…など。
これは自然な事だから仕方がないと、毎日我慢するばかりでは面白くありません。
ちょっとした工夫で、少しでも楽になり、快適に暮らせると良いですよね。
母の生活をサポートする中で気がついた、一例を紹介します。
主役は「マスキングテープ」です。


マスキングテープって、どんな物?

マスキングテープってご存知ですか?
一般には、可愛くて綺麗な柄が描かれたテープとして、近年とても人気があります。
元々は塗装時に、色を付けたくない部分を覆ったり、資材の識別の為に貼るなど、専門職が使う物でした。
日本で2008年に「文具・雑貨」として色彩を意識した多色の商品が発売され、グッドデザイン賞を受賞しています。開発者の受賞時のコメントには

「文具や雑貨の好きな若い女性をユーザーの中心と想定しました」

とあります。文具・雑貨としては、「主に若い女性を対象と想定した商品」として、近年に開発された物のようです。高齢者の方には、あまり馴染みのない物かもしれません。

〈参考資料URL〉https://www.g-mark.org/gallery/winners/9d608ce2-803d-11ed-862b-0242ac130002
 GOOD DESIGN AWARD 受賞ギャラリー
 2008グッドデザイン賞『マスキングテープ』

その後、絵柄の入ったものが売り出されました。プレゼント包装や装飾に使う、手帳に貼る等と、一般の人々に広く使われるようになりました。今では複数のメーカーから、多種多様なマスキングテープが販売されています。
アート材料としても使われており、病院、介護施設、学校などで使いやすい「薄くてちぎりやすい、誰でも創作が楽しめるマスキングテープ」もあるそうです。福祉の現場では、創作活動にも使われているのですね。

私もマスキングテープが好きで、数個集めています。プレゼント包装や、小物に貼ったりと「装飾用」として使っていました。
でも、ある事をきっかけに、とても「実用的」な物だと、気がついたのです。

母への荷物に使ってみよう

私の母は、サービス付き高齢者向け住宅で暮らしています。
入居者は、洗濯や掃除を自分でされる方、ご家族やヘルパーさんに頼んでいる方など様々です。
私は母の病院への通院、買い物、洗濯などをサポートしています。衣類を私が持ち帰り、洗濯をして届けています。
母の入居当初は、畳んだ衣類を全部ひとつのトートバッグに入れて、母に渡していました。

最近になり、母が指の力の衰えを訴えるようになりました。目も見えにくくなったと言います。お風呂に入る前の着替えの準備も、一苦労の様子でした。
そこで私は、洗濯した衣類を前にして
「お風呂1回分ずつの着替えを、小分けしてみよう」と思い、食品用の薄いポリエチレンの袋に入れてみました。
スーパーマーケットで袋詰めの台に置いてあるような、薄手の袋です。
下着も入れますが、中身が見えた方が母にとっては分かりやすいので、これにしました。

「さて、袋の口を何で閉じるかな」
まず頭に浮かんだのは、セロハンテープ。
「いやいや、開ける時に袋が破れ易いし、貼ってある場所も分かりにくくて、母には向かないわ」

そして、ふと思いついたのがマスキングテープ。
「テープが目印になって、開け口が分かり易いし、綺麗で母が喜ぶかも」
カラフルなテープを5センチ程の長さに切り、袋の口を折って留めました。

と、そこで靴下を入れ忘れたのに気づき、再び開ける事に。
「あー、しまった。開けたら破れるかな」
意外にも、とても簡単にテープを剥がせて、再び留める事が出来ました。そしてしっかりと留まっています。

これは良いかも!
小分けした袋を2つ、トートバックに入れて、母の反応を楽しみに、着替えを届けました。


マスキングテープが母のお気に入りに

後日、数回洗濯物の受け渡しをしてから、母がこんな事を言いました。
「着替えが小分けになって、お風呂の準備が楽になった」
「とても可愛いテープで袋が留めてあるけど、あれは何? 色々な柄で、今日はまた違うって楽しんで見ているよ」
「テープの場所がすぐに分かるし、貼り直せて、とても便利。今度、街に出たら、私もあのテープが買いたいわ」
想像した以上の喜びようで、私も嬉しくなりました。

その後、コロナ対策の施設の面会制限が解除された日、久しぶりに母の部屋に入れました。
毎回捨てただろうと思っていた袋は畳んであり、マスキングテープと共に綺麗に取ってありました。

マスキングテープは、みんなに優しい

マスキングテープは主に紙製で、粘着力が弱めです。剥がしやすく、テープ跡も付きにくい点が特徴です。
紙製と言っても丈夫で、数回は繰り返し使えるので、環境にも優しいと思います。
テープの粘着力が弱い事が、指の力の衰えた高齢者にとっては、剥がす時に力が要らず、助かります。
また、切り取りの点線が入っている物もあり、簡単にちぎって使える点も良いです。安全なテープカッターも販売されています。
これは高齢者だけでなく、幼児や、麻痺などで指が動かしにくい方にとっても、同じ様に使いやすいのでは?と思いました。
袋の中身を取り出す度に、楽に開けたり閉じたりできるのは、誰にとっても便利で気持ちの良いことです。
また、メモ用紙を貼る時などに利用すると、カラフルで目を引き、見る人の注意力が上がるかもしれません。


ワクワク・ラクラクを見つけよう〜誰もが楽しく〜

綺麗な色や絵柄のマスキングテープ。最初は若い女性向けに開発されたとはいえ、年齢や性別に関係なく、とても利用価値がありそうです。
生活する中で「これは若い人が使うもの」「年寄り向きのもの」「女の子が使うもの」「男性用のもの」という、対象を分けるような言葉を時々耳にします。そんな固定観念に縛られていると、良い発見を逃してしまい、勿体無いことだと思います。綺麗で便利な物は、世代も性別も超えて、きっとみんなの心を明るくするでしょう。

試してみたら使い勝手が良くて、嬉しくなったという物は、これだけでなく他にもあるはずです。
高齢者に限らず、その方にはまだ馴染みのない物を、生活に取り入れてみませんか?それが、ご本人とサポートする側、両方のワクワク・ラクラクのきっかけになるかもしれません。
そして、そんな体験を周りの方に伝えて、ぜひ広めてほしいです。誰かの「楽しい気持ち」が他の人と繋がり、広まって行くといいなと思っています。 

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kokoron

お花を育てるのが好きな主婦です。 数年前に10代で脳卒中を発症した息子と、 高齢で車椅子ユーザーになった母と、 骨折後、体調を回復してきた義母のサポートをしています。 そんな毎日の中で、人に助けてもらう有難さを知りました。小さな気づきを発信できたら良いなと思っています。

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