おじいちゃん在宅介護 1回目のお別れの時 ~前編~ はこちら。
専門職の方々には おじいちゃんとのお別れの時までの貴重で大切な時間を頂いた。
私がこの家に嫁いで30年程の中 お互い良く理解が出来ていないままの今 初めてと言って良い程おじいちゃんとゆっくり話す時間が出来た。
父親を幼い頃に亡くされ 母親が苦労して自分達を育ててくれた話。
他の子が学校に行く中 自分は田畑の守りを兄弟でしなければならなかった話。
子牛の世話をし 売られて行く時の悲しかった話。
京都の山里から養子に行く際 母親が気使い羽織袴を新調し持たせてくれた話。
そして何よりおばあちゃんと一緒に暮らしてきて本当に幸せだった話。
何回もの「おおきに!」の言葉と共に。

永遠に続くかと思った介護。
訪問看護さんやヘルパーさんの手厚いお世話により 点滴が外れご飯も何とか自分で取る事ができ 栄養剤も飲める様になり…。季節も変わり外の景色が見えない部屋の窓の外はこれから雪積もる冬となる。
街中は1年で1番賑わう観光地。主人と同意の意思決定を伝え 施設受け入れ可能のタイミングとなり 私にとっては突然の様なやっとの様なお別れの時となる。
正直本音を言えば しんどい何カ月もの間施設のお世話になれず 元気になってから受け入れなのかと複雑な気持ちはぬぐえず…。
ケアマネさんからの「二度と帰って来られませんよ」と言う言葉が何度も頭をよぎりながらの大急ぎの荷作り。そして施設へ。
晴れ男のおじいちゃん。寒い冬の光に照らされながら。
介護タクシーの中でのPCR検査を無事終え 防護服の看護師さんに「何か言葉をかけられますか?」と言う一瞬の声かけに浮かんだ言葉が マスク越しの「いっぱいご飯食べるんやで」 そんなベタな一言だった。でも食べる事が大好きなおじいちゃんへ贈る言葉は 近くにいたからこその最高の一言だったと我ながら豪語する。
コロナ第8波突入で一緒に施設に入る事も出来ず おじいちゃんの乗ったストレッチャーだけが施設に入って行き 段々小さくなって行く姿を主人と見守る。
見慣れたヘルパーさん達に元気良く声を掛けて頂く。感謝の気持ちで一杯になる。これがおじいちゃんとの1回目のお別れ。
そして我が家の介護ベッドが無くなり今までに起きたことは事は何だったんだろうと思われる位のおじいちゃんの部屋。
帰りたがっておられないかな。寂しがっておられないかな。
最後まで自分の建てた家に居たかっただろうに。あれほど介護の終わりを探していたのに 今更こんな無責任極まりない様な思いが湧き上がる。

雪も溶け 時が経ち介護中何か癒しになればと思い 山里を思い出すおじいちゃんの枕元に置いた5匹のメダカ。
飼い主の居なくなったメダカが何十匹にも増えた今 水槽を行ったり来たり何となくぽっかり空いた私の気持ちを埋めてくれている。
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